34

12/20

2034人が本棚に入れています
本棚に追加
/373ページ
だから。 「いきなり指輪は、ちょっと嫌がられるかと思ったんだ。でも、それは悠稀に絶対に似合うと思う」 悠稀の手の中にある箱には、指輪が入っていた。 シルバーに筆記体で細かい文字の書かれた、綺麗でシンプルな指輪。 それを、悠紫が悠稀のために選んでくれたのだ。 「……ありがとう。大切にするわ」 はにかむような笑顔。 ほんのり赤くなっている頬を見ると、照れているようだ。 その顔を見て、決意が固まった。 今までは、どこかで躊躇っていたのだが。 やっぱり、言いたい。 決意が鈍る前に言ってしまおうと、悠紫が立ち上がって悠稀に寄る。 「悠紫、どうしたの?」 幸せそうに指輪を眺めている悠稀。 その悠稀を、指輪ごと抱きしめた。 腕の中で悠稀の体が強張るのを感じて、少し躊躇する。 だが、今しかないんだ。 「……悠稀、好きだ」 耳元で、優しい声でそっと囁いた。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2034人が本棚に入れています
本棚に追加