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「悠稀」
あまりにもこっちに気付かないため、声をかけてみる。
びくりと体を跳ねさせ、悠稀が徹斗の方を見た。
「……あ、徹斗?」
「何してんだ?すげー怪しかった」
くすくす笑いながら、徹斗はもたれていた扉から体を離す。
それは、家に入れという無言の合図だ。
悠稀は一瞬だけ躊躇したが、覚悟を決めたのか真っ直ぐ徹斗に向かう。
―――――――――――
「で、何しに来たんだ?」
お茶を出しながら、徹斗が聞く。
目の前にいる悠稀は明らかにおかしかった。
何かを悩んでいるのは分かるのだが、言う事を躊躇っているのか目線が泳いでいる。
「悠稀、落ち着けよ」
「……落ち着いてるわ」
そう言いながらも、さっきからずっとお茶を飲み続けている。
落ち着いていない証拠なのだが、本人は気付いていない。
「嘘だな。お前、なんかあると絶対に俺んとこにくる。今度は何だ?」
優しく聞いてやると、ぴたりと悠稀の動きが止まる。
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