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悠稀が悠紫に返事をしてから、もう一週間が経った。
あれから大樹にも紘子にも、もちろん徹斗にもお祝いしてもらえた。
「それじゃ、行ってきます」
「……えぇ」
最近、柑奈の様子が変だ。
いつも何かを考えているかのように、上の空。
その様子を見て、悠稀は顔をしかめる。
何故、ずっと考えているのだろうか。
自分の母親は、何に怯えているのだろう。
それでも悠稀は聞きに行く事はしない。
今は、悠紫を待たせているから。
「悠紫!」
「悠稀。おはよう」
私服の悠紫が微笑む。
悠稀も微笑み返して、どちらともなく手を繋ぐ。
そんなありふれた事が、悠稀には幸せだった。
この幸せを手に入れられたのは、徹斗のおかげだ。
「どこ行くの?」
「着くまで内緒だ」
悪戯っぽく微笑む悠紫に、悠稀は走って着いていく。
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