35

2/12

2034人が本棚に入れています
本棚に追加
/373ページ
悠稀が悠紫に返事をしてから、もう一週間が経った。 あれから大樹にも紘子にも、もちろん徹斗にもお祝いしてもらえた。 「それじゃ、行ってきます」 「……えぇ」 最近、柑奈の様子が変だ。 いつも何かを考えているかのように、上の空。 その様子を見て、悠稀は顔をしかめる。 何故、ずっと考えているのだろうか。 自分の母親は、何に怯えているのだろう。 それでも悠稀は聞きに行く事はしない。 今は、悠紫を待たせているから。 「悠紫!」 「悠稀。おはよう」 私服の悠紫が微笑む。 悠稀も微笑み返して、どちらともなく手を繋ぐ。 そんなありふれた事が、悠稀には幸せだった。 この幸せを手に入れられたのは、徹斗のおかげだ。 「どこ行くの?」 「着くまで内緒だ」 悪戯っぽく微笑む悠紫に、悠稀は走って着いていく。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2034人が本棚に入れています
本棚に追加