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着いた場所は、前に来た事のある場所だった。
「……ここ」
そこは、海だったのだ。
悠紫が悠稀を置いて帰ってしまった、嫌な場所。
なんでここに連れてきたのか。
悠稀が睨むように見ると、悠紫は苦笑いで悠稀を見下ろす。
「前の事、謝りたいんだ。ここで」
悠紫は悠紫なりに、あの日にけじめをつけようと思っていたのだろう。
そして考えついたのが、悠稀を連れてくる事だった。
「いらないわよ、そんなの」
前に自分はちゃんと悠紫を許したのに。
彼は、無駄なところで真面目なのだから。
「悠稀がよくても俺が嫌なんだ」
真剣な眼差しに真剣な声。
それを笑い飛ばす事が出来なくて、悠稀は真っすぐ悠紫を見上げた。
「悪かった、悠稀」
悠紫が頭を下げて、謝ってくる。
いらないと言っていたのに、何故。
仕方ないとため息をつくと、悠稀は悠紫の髪に手をおいて微笑む。
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