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「気にしてなんかないわ。だからもういいの」
悠稀の笑いながら言う声に、悠紫はやっと顔をあげる。
悠稀の表情は言葉の通り、とても穏やかで。
本当に怒ってはいないらしい。
「で、このために海に連れてきたの?」
「あぁ、一応は。他にどこか行きたい場所があるなら連れてくぞ?」
「ないわ、ここでいい」
悠稀が砂浜を歩く。
その足跡の上に、悠紫の足跡が重なる。
二人はしばらく、何も話す事なく歩いていた。
「ねぇ悠紫。最近、母さんが変なの」
いきなりの悠稀の言葉に、悠紫は足をとめる。
数歩先で、同じように悠稀も足をとめた。
「変?」
「そう、変」
悠稀の家に何度かお邪魔した事のある悠紫だから、柑奈の性格も知っている。
あの明るい人が変とは、どういう意味だろう。
「ずっと何か考えてて、何かに怯えてるのよ」
怯えてる。それがどういう意味かは分からないが、あまりいい話しではないようだった。
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