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家に帰った悠稀は、驚いた。
家の中にあった物は倒れ、部屋には柑奈の姿がない。
「……母さん?」
小さく呼びかけても反応があるわけがなく、ますます悠稀の不安が募る。
「どこ?母さん!」
「……柑奈なら、居ないよ」
後ろから聞こえてきた声に、悠稀の体が固まった。
恐る恐る振り向いた先にいたのは、予想通りの人物で。
「迎えにきたよ、悠稀」
「……父さん」
にこにこと微笑みながら悠稀に近寄る斎を見て、体が震える。
そしてやっと理解した。
今までずっと柑奈が怯えていた理由を。
怯えていた人物を。
「なんで?」
囁くようにして問いながら、悠稀はばれないように携帯を触る。
探し出したのは、徹斗だ。
だが通話ボタンを押したあと、すぐに止めた。
駄目だ。彼に頼ったら駄目なんだ。
これは自分達の問題で、徹斗は全く関係ない。
もちろん、悠紫も関係ないのだから連絡なんて出来ないのだ。
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