35

8/12

2034人が本棚に入れています
本棚に追加
/373ページ
「いや、来ないで!」 「悠稀!」 悠稀の叫びと被せるように、聞き馴染んだ人達の声が聞こえた。 斎は動きを止め、悠稀は目を見開いて四人を見る。 そこにいたのは、大樹達四人だった。 「悠稀、大丈夫?」 紘子が斎の横をすり抜けて悠稀の側に行くと、大樹と徹斗と悠紫はそんな二人を庇うように立つ。 斎の顔がみるみる歪む。 「なんだお前達。悠稀を返せ!」 斎の瞳が真っ直ぐ徹斗に向く。 真っ青な顔をしているが、それでもしっかり立っている徹斗。 その横で、悠紫が斎を睨み付けている。 「悠稀は、お前に渡さない」 「誰だ、お前?」 悠紫を完全に敵と見なしたのか、斎の声は低い。 「俺は……」 「駄目!やめて、悠紫」 言いたくない。また徹斗みたいな事になったら、どうしたらいい? 「俺らが守る。なんのために来たと思ってんだ?」 大樹が呆れたように言う声を聞きながら、悠紫は言う。 「俺は、悠稀の恋人だ」 瞬間。斎の表情が般若のように変わる。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2034人が本棚に入れています
本棚に追加