2034人が本棚に入れています
本棚に追加
/373ページ
次の日、悠稀はいつもの様に一人で登校していた。
誰も悠稀に近付かないし、寄って来たら暴力を振るう。
そんな生活は、正直うんざりだった。
それでもこの学校に来るのは、ただ単に悠紫の存在があるからだ。
「……痛い」
靴箱について上履きを手に取った時、いきなり指に鋭い痛みが走る。
無感動な目でそれを見ると、無数の画鋲の仕業だった。
「馬鹿らし」
一言吐き捨てて、悠稀は上履きを履く。
そろそろ、ここらから演技を始めなくてはいけないのだ。
弱々しい、地味な田之上悠稀を演じるのには、もう飽き飽きなのだが。
「そうも言ってられないし?」
一人でため息をつき、自分の教室に向かう。
最初のコメントを投稿しよう!