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「ぅ、あ…」
倒れ込みそうな悠稀の体を乱暴に掴んで、思いきり突き飛ばす。
悠稀の華奢な体が後ろに飛んで、冷たい壁にぶつかった。
「っ!」
一瞬、息が止まった。
顔をしかめて痛みをやり過ごしてから、悠稀は克巳を睨みつける。
「気にくわねぇ顔」
悠稀が泣かないからか、克巳は目に見えて不機嫌になった。
そのまま、何の躊躇いもなく悠稀を殴り続ける。
だが、それくらいで泣く悠稀ではない。
ただ無言で、終わるのを待っていた。
「……さっさと泣けよ!」
悠稀がなかなか泣かないので、痺れを切らしたのか克巳が叫ぶ。
それを冷めた目で見ている悠稀に気付いて、克巳は頭に血が上ってしまった。
「泣かないから、泣かせてやる」
そして、近くを通り過ぎようとしていた野球部員から、金属バットを取り上げる。
それを、目を見開いた悠稀目掛けてまっすぐ振り下ろした。
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