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咄嗟に悠稀は体を捩って金属バットを避ける。
ドゴッと鈍い音がして、金属バットが床に激突した。
「!!」
こいつ、本気だ!
それを感じ取って、悠稀は竦み上がる。
人一倍人の感情に敏感な悠稀に、克巳の殺気は恐怖を抱くには十分過ぎるものだった。
逃げないと、殺される。
そう思うのに、体が竦んで動けない。
また克巳が金属バットを振り下ろす。
今回は避ける事が出来なくて、悠稀の肩に激痛が走る。
「あぁぁ!」
堪らずに悲鳴をあげる悠稀を見下ろして、克巳は笑う。
また、今度は今までよりも高い位置にバットを振り上げた。
もう、ダメだ。
体が動かない。避ける事ができない。
呆然と克巳を見上げていた視線の隅に、夜色の髪が見えた。
「……けて、助けて」
ほとんど無意識に言葉が出た。
「助けて、悠紫!!」
克巳が、バットを振り下ろした。
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