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ふと、悠稀の叫び声が聞こえた気がした。
その方向に目を向けて、悠紫は目を見開いて立ち止まる。
「いたっ!」
悠紫の少し後ろを歩いていた大樹は、悠紫の背中に思いきりぶつかった。
「お前なぁ…」
「悠稀!!」
大樹の文句にも気付かずに、悠紫は走りだす。
「……悠稀って」
あの、田之上の下の名前だろう?
大樹は、誰にもばれないように顔をしかめた。
そんな大樹の視線の先。
悠紫は、悠稀に向かって走っている。
それほど距離は遠くないが、克巳が振り下ろす方が断然早い。
「ちっ。…やめろ、克巳!」
舌打ちをしてから、悠紫は克巳に怒鳴る。
滅多に声を張り上げる事のない悠紫の怒鳴り声に、克巳は振り下ろした手をとめる。
克巳の側まで来ると、悠紫は克巳をほとんど突き飛ばす様にして、悠稀の前に立った。
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