2034人が本棚に入れています
本棚に追加
/373ページ
「悠稀、平気か?」
優しい声で悠稀に語りかけながら、悠紫は顔を覗き込むように座り込む。
「悠、紫!」
悠紫の姿と柔らかい声を確認して、悠稀の大きな目から涙が溢れた。
そのまま、悠紫の胸に縋り付く。
声を押し殺して泣いている悠稀の頭を優しく撫でながら抱きしめ、悠紫は鋭い視線を克巳に向ける。
「えっ、と…」
困った様に目を逸らす克巳の横から、不機嫌丸出しの大樹が顔をだした。
「何してる、悠紫」
「見て分からないか?」
そう言って、今より強く悠稀を抱きしめる。
それを見て、ますます不機嫌そうになる大樹。
「お前、そいつが誰か分かってんのか?田之上だぞ」
大樹の言葉を聞いて、悠稀の体が強張る。
「別に、今に始まった事じゃないだろ。お前だって、俺が悠稀といるのいつも見てるしな」
大樹の目が見開かれて、悠稀が慌てたように顔をあげる。
最初のコメントを投稿しよう!