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「別に、田之上がお前と仲がいいとかは関係ないだろ。俺は、田之上を泣かすために虐めてんだ」 大樹の言葉に、悠稀の表情が消える。 無表情のまま大樹を睨んで、悠稀は口元だけを吊り上げる。 「なら、泣いてあげようか?」 突然の言葉に、大樹だけじゃなく悠紫までも驚いて悠稀を見る。 が、悠稀の視線は真っ直ぐ大樹に向いている。 あの、敵意丸出しの鋭い瞳で、口元だけを吊り上げて。 「それでお前が私の前から消えてくれるなら、一回くらい安いものよ」 そう、吐き捨てるように言ってから悠稀は踵を返す。 「どうした?」 「帰るわ。だって、こんな気分で授業なんか受けれないもの」 悠紫には普通の顔で受け答えをする。 床に落ちている鞄を拾って帰ろうとする悠稀を、大樹はほとんど無意識で止めた。 「……何」 だが、向けられた表情や声は、凍えるほど冷たい。 何でもない、と言ってから悠稀を掴んでいた手を離す。 悠稀は悠紫に笑みを向けて、一回も大樹を見ないで帰って行った。
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