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「あぁ、よろしく」
徹斗は悠紫が無表情なのが気に入らないようだが、あえて何も言わない。
徹斗は気付いたのだ。悠紫から、悠稀の部屋の知らない香水の匂いがするのを。
だが、今はそれを言っても意味がない。
だからそのかわり、悠稀を後ろから抱きしめるようにして、体をもたれさせる。
「徹、重い」
「我慢我慢」
悠稀の抗議も全く気にする様子がない。
そして悠稀も、口ではああ言っているが嫌がるそぶりを見せない。
「とりあえず、帰ろう?悠稀」
俺眠い。そう言って欠伸をする徹斗。
「…あ~、そうね。そうするわ」
徹斗の様子を見て、呆れた様に頷く悠稀。
「悠稀」
徹斗と一緒に歩きだそうとした悠稀を、悠紫が咄嗟に呼び止める。
悠稀はちらっと視線を悠紫に向けたが、声を出さずに何かを伝えるとすぐに視線を反らす。
「待ちなさいよ、徹!」
そして、先に歩いて行っている徹斗の後を、文句を言いながらも追いかけて行った。
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