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悠稀と徹斗の姿が見えなくなるまで、悠紫はずっと見ていた。
「立花、あれ誰だ?」
「あれ?あれは出水徹斗(いずみ)って言って、ある意味悠稀を守る騎士みたいな感じかなぁ」
紘子はいつも遠回しな事しか言わない。
半分嫌味で徹斗の事を騎士、悠稀をお姫様などと呼んでいるのだ。
「ふぅ、ん」
あまり興味なさそうな悠紫に、紘子はにこっと笑う。
「あのね、何で悠稀があんなに男慣れしてないと思う?」
「……はぁ?」
いきなり意味の分からない事を紘子が言うので、悠紫は困惑した。
「俺が知る訳ないだろう」
「あの子の横には、いつも出水が居た。彼が居たから誰も悠稀に寄れなかったの。中学の悠稀は、あんな地味な格好してなかったから」
紘子が思い出すように語る。
その目は切なそうに細まっていて、とても悠稀を嫌っているように見えない。
「立花、お前何で悠稀を嫌ってるんだ?」
悠紫の問いに、彼女は悲しそうに笑うだけだった。
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