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この時間が、悠稀の安らぎだった。
と、ふいに聞こえた靴音を聞いて、悠稀の顔が強張る。
「……大丈夫だ。その姿なら、俺以外はお前が悠稀だって気付かない。もちろん、大樹もな」
目を閉じているのに、悠稀の変化に気付いてくれる彼を、悠稀はどうしようもなく愛しく感じてしまう。
小さく頷くとほぼ同時に、図書室の扉が開いて長身の青年が入ってくる。
金と赤の髪の毛、着崩した制服。見るからに不良だ。
「大樹、どうした?」
悠稀にひざ枕をしてもらったまま、悠紫は問い掛ける。
「…あ~、あいつ知らねぇ?」
言いにくそうに顔を伏せる大樹を見て、悠稀は違和感を感じる。
いつも堂々と悪い事をしているこいつにとって、言いにくい事って何だろう。
「…あいつって?」
だいたい理解したらしい悠紫は、ばれない程度で顔をしかめる。
「あいつ、田之上の事だよ。お前、知らねぇか?」
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