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教室に入った瞬間、しんっと静まり返る。 だがそれも一瞬で、いつもの騒がしさが戻ってきた。 それに、悠稀は困惑する。 いつもなら、何かしらハプニングが起こるからだ。 悠稀に殴りかかってきたり、酷い言葉を浴びせたり。 なのに、今日は何もない。 それが逆にすごく怪しかった。 「変なの」 そう呟いて、悠稀は自分の席に座ってすぐに俯せになる。 寝ているようにしか見えない格好だが、悠稀はいつもこの体制で考えことをするのだ。 虐めがなくなった事は、正直嬉しい。 が、それは皆が飽きてゆっくりとなくなっていったらの場合だ。 今日のように、いきなり虐めがなくなるのは、はっきり言って気味が悪い。 と、その時。教室の扉が勢いよく開いた。 「田之上悠稀、居るか?」 再び静まり返った教室に、明るい声が響く。 ふと顔をあげて尋ねて来た人を見ると、悠稀は驚いたように目を見開いた。
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