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誰もいない廊下を歩いて、たどり着いたのはいつも悠紫といた図書室。
中に入ると、相変わらずの静かさに悠稀の頬が緩む。
「変わらないね、ここ」
「逆に変わったら怖いだろう」
呆れたような声。悠稀を見ていた悠紫からの返事だ。
そういえば、はじめて会った時よりも悠紫の表情は豊かになっている。
はじめの頃は、無表情でいる事の方が多かったのに。
「悠紫は変わったわね」
そう思って言ったのだが、悠紫は不機嫌そうに眉を寄せる。
「どこが?」
「表情が豊かになったわ」
嬉しそうに笑う悠稀に、悠紫は首を傾げる。
何が嬉しいのか分からないが、悠稀が嬉しそうなのはいい事だ。
そう思ったから、深く追求しなかった。
だが、表情が豊かになったのは当たり前だ。
今までのつまらない生活じゃなくなったから。
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