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と、いきなり足音が早くなった。 やばい。そう感じとって、少女も足を早める。 だが、思っていたより足音が早く、もうすぐそこまで迫っている。 後ろは怖くて振り向けない。 とうとう、がしっと腕を掴まれた。 「いやっ!」 掴まれた手を振りほどく。 「……貴方は」 そこにいたのは、少女と同じクラスの少年。 「嫌、だなんて酷いなぁ、田之上さん」 そう言って、少年は悠稀に笑いかける。 「……芝田君、だっけ?」 悠稀の記憶が正しいなら、この少年は芝田 慶輔(しばた けいすけ)だった筈だ。 だが、悠稀は彼を知らない。 慶輔は、クラスでは誰とも全く話さない、暗くて存在感のない生徒だ。
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