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徹斗の後ろから怖ず怖ずと顔を出した悠稀は、慶輔の持っている物を見て小さい悲鳴をあげた。 「徹、逃げましょう!素手じゃ無理よ!!」 悠稀の言葉に、徹斗は首を振る。 「悠稀、隠れとけ」 そう徹斗が言った瞬間、奇声を発しながら慶輔が襲い掛かる。 顔を狙って突き出したカッターナイフを避け、がら空きの腹部に殴りかかろうとする。 「駄目、徹!」 悠稀の声に、一瞬体がとまった。 それと同時に、顔のすぐ横を慶輔の腕が通る。 ぴりっとした痛みと共に、血が徹斗の頬を伝う。 「へへ、油断したな」 にやにや笑みを浮かべている慶輔の右手には、折りたたみ式のナイフが握られていた。 左手にはカッターナイフ、右手には折りたたみ式ナイフ。 これで徹斗が勝てる可能性なんて、ほとんどなかった。
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