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「離しなさいよ!」
低い声とともに、悠稀の膝蹴りが慶輔の腹部に当たる。
「うっ」
腹を押さえて呻く慶輔の下から這い出して、悠稀は徹斗に向かう。
だが、徹斗のところにつく前に、慶輔は悠稀の長い髪を掴んで引きずり倒す。
「手間取らせやがって」
そう言う慶輔の手には、しっかり握られたナイフ。
「悠稀ちゃん。死体になってずっと僕の側にいてよ」
にやにやした笑みのまま、慶輔は言う。
悠稀の顔が恐怖に歪む。
こいつは、慶輔は悠稀を殺すつもりだ。
それに気付いて、徹斗は震えた。
目の前で悠稀が危険な目にあっているのに、自分は何も出来ない。
やめろ、やめてくれ!
血を流しすぎたせいか、体が怠いし声が出ない。
慶輔が、手を振り上げた。
「やめろ――――!!」
徹斗の絶叫が、辺りに響き渡った。
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