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「うぐっ!」
呻き声をあげて、慶輔が悠稀に覆いかぶさる。
何が起きたのか分からない悠稀と徹斗。
唖然としている悠稀は、優しく抱き起こされた。
悠稀を抱き起こしたのは、悠紫だった。
「……悠、紫だっけ?」
徹斗は一度しか見た事ない人物を見て、首を傾げる。
「大丈夫か、悠稀?」
悠紫は、悠稀の顔を覗き込む。
「…徹!」
だが、悠稀は自分を助けたのが悠紫だとは気付いていないようだ。
自分が動けるのだと理解すると、悠紫の腕を振り払って真っ直ぐ徹斗に向かう。
「徹、しっかりして!」
徹斗の前にひざまずくと、悠稀はハンカチで足を押さえながら必死で徹斗に呼び掛ける。
それを聞いて、徹斗は安心した。
悠稀は無事だ。どこにも怪我はないし、元気みたいだ。
安心した瞬間、今まで張り詰めていた緊張が一気に解ける。
それと同時に感じたのは、凄い倦怠感だ。
血を流しすぎたと気付いた時にはもう遅くて、徹斗は意識を手放した。
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