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二人の間を秋の風が少し強く吹き抜けた。
耳をすませば、もう、本日一時間目の授業が始まっているようで、グランドの方からは生徒達の声が聞こえてくる。
「あ、一ノ宮さんごめん。授業始まっちゃったみたいだね。」
唯はポケットから携帯を取り出し只今の時刻を確認した。
「一ノ宮さん?」
「えっ、そうね。じゃあ、今から出るのもなんだし、生徒会室でお茶でもどう?」
「俺、部外者だけど?」
「どうせ、誰もいないもの。」
紗那はさっきの告白などなかったかのように話す唯に戸惑いながらも、安堵し、何か複雑な気分だった。
唯は唯で勢い余ってあんな告白をしてしまったものの、そのあとの事など考えてもいなかったのが事実だ。
そんなおり、紗那の申し出は願ってもない事だった。
そして、そんな微妙な二人の思いが交差するなか、紗那の案内で生徒会室に到着した。
「九条君、コーヒーと紅茶どっちが好き?」
「…紅茶。」
何気ない紗那の質問だったが、彼女の人柄があらわれるようだった。
普通、人は
『コーヒーと紅茶どっちにする?』
と、聞くのが普通だ。
すると、日本人は大抵
『どちらでも。』
と、答える。
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