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「それでも、好きな人が目の前にいたら緊張するんだよ。」
「…そうね。」
真っ直ぐに紗那を見つめたまま話す唯に紗那は少し頬を赤く染めて頷く。
「ここは教室から離れてるから、静かでしょ?」
「そうだね。」
紗那が何か話を切り出そうとしているのが、唯にもそれとなく伝わってくる。
「もう一度言わせて?…俺は君の事が好きだよ。本気だから。」
「あ、ありがとう。でも……。」
「うん。」
「私、好きな人がいるの。だから…ごめんなさい。」
そう言って、紗那はカップをテーブルに置いた。
唯にとってその答えは、想定内の返答だった。
最悪、恋人がいてもおかしくない。
だが、今の言い回しだと、最悪の事態は免れている。
その言葉を聞いて、唯の決心は固まる。
「嫌だ。」
「……えっ?」
「諦めるつもりはないよ。」
「でも…。」
「俺を好きになってよ。」
「…自信家なんだ。そんな事を言うなんて。」
「そんな事ないよ。お願いしてるんだ。」
勿論、そんな事を言った所で紗那の気持ちが簡単に動くわけが無いことはわかっていた。
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