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『あのっ!サクヤさんですよね?』
『…そうですけど?』
『あたし!大ファンなんです!握手して下さい!』
サングラス越しにも、女の顔が赤く染まっているのが分かる。
面倒くさ。
そう思いつつも、しっかり営業スマイルしている俺に。
いい加減、うんざりする。
『どうしよう!サクヤだよ?サクヤ!』
こいつは、ウザイ。
お前の馬鹿デカイ声で、周囲の視線が集まったじゃねぇか…
今日、俺はオフだ。
ファンサービスなんて、するつもりはない。
帽子を深く被り直し、足早に去ろうとした。
『ねぇ…サクヤって誰?』
はぁ~?
後ろから聞こえてきた、間抜けな声に思わず足が止まった。
『何言ってんの?!
サクヤだよ?サクヤ!』
周囲の視線も、大声で喋る女も、気にならなかった。
ただ。俺を知らないと言った女に興味が湧いた。
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