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♪~♪~♪
『…千夏。出ていけ』
『はいはい。
問題は起こさないで下さいね~』
ドアの隙間から手を振る千夏を見届け、煩く鳴り響く携帯の通話ボタンを押した。
「もしもし?咲夜?」
『何か用?』
「手紙、読んでくれた?」
『開ける前に灰になった』
「…そう…元気にしてる?」
『あんたに関係ない』
「ねぇ咲夜…家に帰って来ない?」
『何?金が必要になったの?』
「違うわ!ただ…母さんは咲夜が心配で…」
『あんたが必要なのは、俺じゃなくて、アーティストのサクヤだろ?』
「そんな事…」
『泣かないでよ』
「咲夜…」
『虫酸が走る』
受話器越しに聞こえる、すすり泣きの声に、目の前の鏡が映し出していたのは“サクヤ”でなく“咲夜”の顔…
『あんたが泣こうが、わめこうが俺には関係ない。
あんたの存在、迷惑なんだよ』
耳に伝わる泣き声は、先程よりも大きくなった。
それと共に、目の前の鏡にはヒビが入り、その傷をつけた携帯は見るも無残な姿で足元に戻ってきた。
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