2308人が本棚に入れています
本棚に追加
/129ページ
『どうぞ』
申し訳ないほど狭い台所から、湯気の上がったコーヒーを持ってきたかと思うと、俺の前に置き向かいに座った。
『ごめんね。こんな時間に』
『いえ…』
『どうしても里緒に会いたくてさ。我慢出来ずに来ちゃった』
顔を赤らめ、俯く里緒。
俺の勝利は目に見えていた。
『明日は朝から仕事?』
『はい』
『そっか…ごめんね。
顔も見れた事だし、帰るわ』
『えっ…』
結局、30分ほど話したところで、玄関へと足を進めた。
『じゃあ。コーヒーごちそうさま』
『本当に顔を見に来たんですか?』
『そうだよ。本当はもっと早く終わるはずだったんだけど…
でも里緒の顔見て元気になれた。
また来てもいい?』
『休みの前の日なら…』
玄関を閉めると笑いが込み上げてきた。
里緒。知ってる?
お前は俺の毒牙にかかったんだ…
最初のコメントを投稿しよう!