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巴は知っていた。 義仲は兼平を想い、兼平も義仲を想っていることを。 だから 義仲に愛を向けても きっと叶わない。 兼平を憎たらしく思うこともあった。 でも、義仲が選んだ人だから…と、感情を圧し殺してきた。 「…お慕い申し上げておりました。いままで言った事はありませんでいたが、私は貴方を!」 「巴…」 義仲は巴の言葉を遮って言った。 「戦に女を連れてきたと噂を立てられたら、私にとって恥だ」 「また貴方は、心にもない事を…!」 「巴、お前なら分かってくれるであろう」 「…納得できませぬ、分かりませぬ、貴方こそなぜ私の気持ちを分かってくださらないのですか!」 「義仲様がなぜこう言うのか、理解してやるのだ巴」 「……っ…」 なぜ。 今までずっと一緒にいたのに。 一緒に…… 義仲様… なぜ私に生きろと。 一緒に居てはいけないのですか? 生きるも死ぬも一緒と誓ったのに…… 「巴…。お前には、私たちが居たという事実を、後の世に残して欲しいのだ」 「義仲様……」 「お前になら、我らの暦を託せる。お前になら…任せられる」 「……」 生きてほしいんだ。 大事な、友だから。
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