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「義仲様、平家は全て都を出て行ったようです」 「…そうか…」 「…どうしますか?」 義仲は珍しく般若の面を取る。 その容姿は美しい。 それを見た郎等(家来)は、胸を高鳴らせる。 もう少し近くで顔を拝んでみたい。 しかし、その欲望はすぐに掻き消された。 「義仲様」 「ん、兼平」 ――兼平。 そう呼ぶ義仲の声に少し熱が入る。 彼らは幼い時からの親友で、何時でも時間を共にしてきた。 お互い、他には向けない特別な感情を抱いている。 しかし、その思いを口に出したことは一度もない。 「平家は…と、その前に面をしていただけますか?」 スッ、と兼平が義仲の頭に手を伸ばす。 その容姿を厳つい面の下に隠してしまう。 …他の誰にも、見せたくないのだ。 そして続きを話し始めた。  
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