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「平家は、都を下り備中からこちらに向かっていると」 「そうか、では…備中の方へ手は出すな。」 「はい、それと……法皇がこれ以上の移動は苦だと」 「…法皇が?ここから逃げなければすぐに平氏の軍がくるというのに」 「はい…どうしますか」 「……手塚!手塚太郎!」 義仲は手塚太郎を呼ぶ。 手塚太郎は、他の郎等に一目置かれている程武勲を立てている。 そんな太郎を、義仲も信用していた。 「法皇の事は、お前に任せる。」 「はっ!」 手塚太郎はそう勢いよく返事をしてすぐに寺へ向かった。 「義仲様!」 「なんだ兼平、騒々しい」 「あいつは…考えが卑しい奴です、そんな奴に法皇の行方を任しては…!」 「…いいのだ、あいつは決して卑しくなどない」 「…義仲様…」 義仲は"疑い"という言葉を知らないと言えるくらい純粋な心を持っていた。 純粋で、素直だった。 それが時には邪険に思われる事もあったが、 全てのものは大抵、彼の虜になっていた。 その美貌によって。 しかし、兼平が思った通りの恐ろしいことが起きた。 手塚太郎は、なぜか法皇を幽閉してしまった。 そこには、ある陰謀が張り巡らされていた。
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