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頼朝は一条次郎に、義仲を討ちに向かわせた。
…死ぬなら近しい友の手で。
バカな行いを悔やめ。
あの侮辱を…!!
次郎はその命を望んでうけたわけではなかった。
むしろ、その汚い頼朝の考えに嫌気を覚えていた。
江戸から敵視されてしまえば、平氏に戦で勝ったとしても…良い地位も権力も、もちろん財ももらえるわけがない。
…だから義仲を切り離す。
という建前。
でも本当は…
『やめてください!!』
『義仲、己…私を拒むのか?!』
『私は男です……』
『お前は私に恥をかかせるのだな』
『そ、そんなことは決して…!!』
一条は知っていた。
頼朝は、義仲に断られ
怒りを覚え…
だから殺すんだ。
最低な人間だ…。
そのような汚い者の手で散らされるより
…私が、彼を討とう。
一方、
義仲は手塚太郎が法皇を幽閉したなど露知らず。
手塚は義仲には"しかと江戸まで送り届けた"と告げた。
義仲はもちろん疑いもせずその言葉を信じていた。
義仲は兼平に都に少し残った敵兵の事を任せ、
家来の巴と手塚太郎、手塚別当と共に、兵を引き連れ粟津に向かっていた。
「巴、兼平は…きっと追いついてくるであろうか」
「えぇ、それは貴方が一番知っているとお思いですが」
「…そうだな、兼平が負けるはずないか」
無言で微笑む巴は、兼平の良き理解者で、良き友。
武勇、学問ともにすぐれた非の打ち所のない女性だ。
兼平と同じように、義仲を慕っている。
「…!!あ、あれは!」
「!」
手塚別当が声をあげる。
粟津の山中。
向こうに見えるは源氏の兵。
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