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あそこにもいる。そこにもだ。近頃やたらと俺の回りに増えてきた。
ほら、いるだろ。ガッチャマンみたいなヘルメット被った奴ら。顔も表情すらもわかんねえ。
あれは俗にいう、スレなしユーザーだ。
スレッドを持っていないユーザーは、この仮想空間ではみんな一様にああ見える。もちろんアチラからこっちは見えていない。そのくせに、喋るのはいっちょまえにしやがる。言い返しても、聞いてんのかすらもわかんねえ。最高に気味が悪くてムカツク奴らだ。
最近、俺はチーム打率のランキングトップにいる。バントは完全に打者有利で、普通にやってりゃ6割位は平気でいく。ま、ランクインはどうでもいいんだが、ユーザー名が目立つとこにあるということは、初心者やスレなしが対戦に来やすい事に繋がる。
お陰で俺の周辺はガッチャマンだらけだ。
ほっとくのもなんなんで、気が向いたら再戦してみるが、なんとも張り合いのない、つまらん試合にしかならない。
やってみるかな。
コンチェルト破り。
このチームを作ったのはもともとそれが目的だったしな。でも、迷惑じゃねーかな。まるっきり無関係だし。
どうしようかな。
そう思っていた矢先、コンチェルト主催のWBCなる大会が開催されている事を知った。
それでは尚更俺なんかが乗り込んでも迷惑なだけだ。
やっぱりやめとこう。
くそ…なんかつまんねえ。
ボインがいなくなってからというもの、俺は大体いつも一人で動いている。
そんなに交流は得意じゃない。どうせ、ネットの中だけじゃねーかという思いがある。いくら親しくなったって、それは所詮この仮想空間の中だけでのこと。相手は自分が見せた部分だけしか知ることはない。都合はいいが、浅い。
俺は必然にGMに、この仮想空間に訪れる機会が少なくなっていった。
何日も前の日付の掲示板。
スレなしばかりの対戦記録。
俺はここで何をしているんだ?
そんなある日の事だった。何となく「ゲームの事何でも」の掲示板を眺めていたら、機動力野球とかいったスレがある。中を覗くと、いつものガッチャマンがなんかほざいている。
「西岡、青木、慶彦とかいったあたりは外せないね」
よくもまあそんなシロートみたいな事が言えるなエェ!ヘルメット被って正解だよあんた。
よく見りゃスレ主もヘルメットだ。駄目だなこいつら。俺はスレなしどもが集うテーブルに、わざと勢いよく座った。
「なっちゃいねえよ」
奴らの動きが止まる。
「走塁13以上バントAorS右打者。それを九人集めて小技指示。それだけできりゃあ誰でも最強さ」
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