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「ほんとっすか!やったあ」
RYO君の表情が輝く。
「よかった。キッシーさんには是非手を貸して欲しかったんです」
ホントかよ…。まあ、言われて悪い気はしないけどよ。
RYO君はメンバーや、他の目ぼしい人に声を掛けて来ると言って去った。また明日ここに来てくれと伝言を残して。
何か用意周到。まんまとのせられたかな、こりゃ。
俺の口がニンマリと歪む。世の中には面白い奴がいるもんだ。
翌日、約束の場所にやってきた。そこには、打撃リーグ事務所、と銘打ってある。やるねえ。立ち入ると、既に誰かいる。RYO君だ。それともう二人、彼が連れてきた人だろうか。ともあれ、俺は席にかけた。
「遅れてすまんな。RYO君、こちらの二人は?」
「昨日言ってた方達です。打撃会メンバーの新星さん。こちらは友達のμさん」
キッシーです、ヨロシク。挨拶も程ほどに済ます。まあ、この先ゆっくり慣れてくるだろ。
「じゃあ後はお願いしますね」
RYO君は席を立ち上がった。って、ええ!俺ら出会ったばっかだぜ?
戸惑いの表情を見せる俺を見透かしたのか、RYO君は涼しい顔でいう。
「大丈夫でしょ。みんなGMユーザー同士なんだからすぐ馴れますよ。僕は他のリーグの事務所の様子も見てきます。また来ますから。新星君はメンバーなんだから、取り纏めお願いしますよ。それじゃ」
矢継ぎ早に一通り発言すると、RYO君の姿は消えた。
「やれやれ、相変わらずのお方だ」
ため息混じりに微笑を浮かべ、テーブルの向かいに座る男が言う。
「いつもあんな調子なんですか?」
俺の質問に男は答える。物腰が柔らかく、知的な印象がある。
「まあ大体ね。貴方がキッシーさんでしたか。RYO君からお話は聞かされています。我輩はμといいます。…スルメ」
!?
語尾、何?
「μさんはシリトリ愛好家なんですよ。あ、私は新星っていいます。RYOさんと同い年。20です。タバコ吸ってもいいですか?」
あ、あぁ…シリトリ??
イマイチ事態が飲み込めず、俺は浮き足立っている。新星君はタバコをふかしながら、脇から取り出した競馬の新聞に目を通している。
この人たちと何かを作り出す訳か…
RYO君、新星君、μさん。
強烈な個性との出会いだった。
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