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俺はGMを放置した。
仮想空間と言えど、基本的には文字だけの世界。
そこには様々な意思の食い違いが存在し、匿名性を利用した無茶な奴も数多くいる。
それに、俺は交流に少々疲れていた。
ボインほど解り合える奴はもういないし、新星君やμさんと交流を深めるのもわざとらしい。
結局、また俺は一人になっていた。
全国大会開催まではまだ一月ある。しかしチームは既に完成している。
暫く離れよう。
俺は結論を出した。
2、3日に1回程度ステージ結果と自スレを覗く。レスは全くない。対戦もない。
そうだな。こんなもんさ、交流なんて。
でも判ってんだ。相手にされないのは、自分が相手にしていない事の裏返し。
こんな時だけ構ってほしいなんて、そうそう都合よくは、いかない。
全国大会が終わったら、退会しよう。
そう決めた。
なぜ、今すぐ退会ではなく、全国まで待つのか。
それは、俺は自分のチームに絶対の自信を持っていたからだ。
ホームでの勝率は9割を超え、打率はランキング1位をキープ。アウェイの勝率も高く、得失点差もランクインしている。
俺が最強だ。
そう信じていた。
大会2週間前を迎え、少し試合勘を取り戻す意味で、ランカーに対戦を挑む事にした。
ポイントランカーは相手にしない。
俺が認める最強者。
それはAWAY得失点差トップだ。どんなにズルしようがナニしようが、この分野だけは誤魔化しが効かねえ。
ホントに強い奴が集まるランキングだと思っている。
そこの1位に燦然と輝く名前。
大帝。
不敵なその名前に、俺はなんの躊躇もなく対戦を挑んだ。
「どうも、初めまして」
手短に挨拶をする。若い。高校生か。一見地味な、どこにでもいるような奴という印象がある。
こいつが得失点差ランク1位…
オーダーは何処にでもあるようなオールスター。さて、いかほどか。
試合が始まる。俺は相変わらずバントしかしないので、問題は相手バッテリーだけだ。そして、相手は斎藤―野村のバッテリー。当面、全国に行ってもこれはついて回る課題。
苦手だと言ってる場合じゃねえ。
バントは思うように決まらない。変化球主体できてやがる。最少のリードで迎えた中盤だった。
大帝の荒木が出塁する。迎える打者は森本。
…嫌な予感がする。
慌てて再選を押すも間に合わず、投球は始まった。
ヤッパリか!
森本は鮮やかにセーフティバント。オールセーフだ。やられた。俺の戦術まるまるだ。続く井端。ここも警戒だ。
右打者走塁13以上バントS以上。
これは勝つためのキーワード。正しく勝利の鍵。
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