第2章 カフェラテとアクセサリー

2/11
3583人が本棚に入れています
本棚に追加
/2979ページ
水曜の夜9時過ぎ、一人の背の高い若い男性が入ってきた。 彼は夜景に気も留めず、まっすぐカウンターに座った。 よく手入れされたロングの茶髪で、洗いざらしのコットンシャツを黒のTシャツの上に羽織って軽くまくっている。 ちょっと年下みたいだけど、なかなかのイケメンで、自分の世界を持ってるような落ち着いた雰囲気があった。 「カフェラテをお願いします」 「はい」 丁寧な注文にも好感が持てる。 うちは、エスプレッソマシンも置いている。 だから、カフェオレもカフェラテも淹れ分けられる。 もしかして、カフェオレとカフェラテの違いがわからない人がいるかしら? ネットで調べてみてね。 「どうぞ」 彼の前にカフェラテを差し出した。 「いただきます」 その言葉にさらに好感度アップね。 彼はそっとカップに口をつけ、一口飲んだ。 表情が変わった。 もう一口。 そして、もう一口。 「……うまい……」 彼は本当に驚いたような表情でつぶやいた。 「ありがとうございます」 私はカップを磨きながら、軽く会釈した。 「いらっしゃいませ~」 テラス席を片付けていた由梨が戻ってきた。 彼はちらっと由梨を見て、会釈したが、珍しく由梨の虜にはならなかったようだ。 すぐにカフェラテに意識を戻して、味わい始めた。 彼はあっという間に、飲み干してしまった。 「あの、お代わりもらっていいですか?」 「はい」 私は嬉しくなって、いつも以上に気合いを入れてカフェラテを淹れた。 彼は、2杯目は幸せそうな笑顔になって飲んでいた。 そんな彼を、ついじっと見てしまっていたようだ。 目があった途端、戸惑ってしまった。 彼は軽く微笑んで、またカップを口にした。 「ごちそうさまでした」 彼はすっかり笑顔で言った。 「いえ」 私は会釈した。  
/2979ページ

最初のコメントを投稿しよう!