3583人が本棚に入れています
本棚に追加
/2979ページ
水曜の夜9時過ぎ、一人の背の高い若い男性が入ってきた。
彼は夜景に気も留めず、まっすぐカウンターに座った。
よく手入れされたロングの茶髪で、洗いざらしのコットンシャツを黒のTシャツの上に羽織って軽くまくっている。
ちょっと年下みたいだけど、なかなかのイケメンで、自分の世界を持ってるような落ち着いた雰囲気があった。
「カフェラテをお願いします」
「はい」
丁寧な注文にも好感が持てる。
うちは、エスプレッソマシンも置いている。
だから、カフェオレもカフェラテも淹れ分けられる。
もしかして、カフェオレとカフェラテの違いがわからない人がいるかしら?
ネットで調べてみてね。
「どうぞ」
彼の前にカフェラテを差し出した。
「いただきます」
その言葉にさらに好感度アップね。
彼はそっとカップに口をつけ、一口飲んだ。
表情が変わった。
もう一口。
そして、もう一口。
「……うまい……」
彼は本当に驚いたような表情でつぶやいた。
「ありがとうございます」
私はカップを磨きながら、軽く会釈した。
「いらっしゃいませ~」
テラス席を片付けていた由梨が戻ってきた。
彼はちらっと由梨を見て、会釈したが、珍しく由梨の虜にはならなかったようだ。
すぐにカフェラテに意識を戻して、味わい始めた。
彼はあっという間に、飲み干してしまった。
「あの、お代わりもらっていいですか?」
「はい」
私は嬉しくなって、いつも以上に気合いを入れてカフェラテを淹れた。
彼は、2杯目は幸せそうな笑顔になって飲んでいた。
そんな彼を、ついじっと見てしまっていたようだ。
目があった途端、戸惑ってしまった。
彼は軽く微笑んで、またカップを口にした。
「ごちそうさまでした」
彼はすっかり笑顔で言った。
「いえ」
私は会釈した。
最初のコメントを投稿しよう!