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「結衣、そろそろ行こうー」
私は由梨に声をかけられて、出掛ける支度をした。
貸しスタジオは元町ロフトの2ブロック隣にある。
そこまでは、うちのコンパクトカーで行く。
自宅の車庫は小さめなので、コンパクトカーでぴったり。
ほんとはもっと大きな車にしたいけど、エコでいいかもしれない。
それに、最近のコンパクトカーは見た目よりも中が広いので、今のところ、機材を積むのに困ってない。
ライブの時は打ち上げで飲むからタクシーで行く。
運転は二人ともできる。
その時の雰囲気で運転手が決まる。
由梨が先に車のキーを取って、私にチャラチャラと見せながらにこっとした。
今日は運転する気らしい。
新曲を車の中で聴きながら練習するし、そっちの方がいい。
私は右手の親指をすっと立ててOKと伝えると、助手席に座った。
由梨の運転は静かだ。
表現としてはおかしいかもしれないけど、やっぱり、そう言った方がしっくりくる。
気が付けば動き出してるし、気が付けば停まっている。
景色を眺めているうちに気が付けば目的地に着く。
車に乗っていることに気を使わせないというのは、それだけ運転が上手いということだろう。
逆に私は、運転がうるさい……
スタートはダッシュするし、停まる時は急。
カーブを見ると「アクセルを踏む」し……
そう。
G(重力)を感じるのが大好きなのだ。
そういう運転の時、由梨はどうしてるかって?
ぜんぜん平気。
たまにカーブでウィンドーに頭を打つけど、平気な顔して口だけで「痛ったぁ~」とか言ってる。
普通なら、ど突かれてもおかしくないんだろうけど。
あの余裕は本当にすごい……
尊敬してます、はい。
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