第4章 Y's

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「結衣、そろそろ行こうー」 私は由梨に声をかけられて、出掛ける支度をした。 貸しスタジオは元町ロフトの2ブロック隣にある。 そこまでは、うちのコンパクトカーで行く。 自宅の車庫は小さめなので、コンパクトカーでぴったり。 ほんとはもっと大きな車にしたいけど、エコでいいかもしれない。 それに、最近のコンパクトカーは見た目よりも中が広いので、今のところ、機材を積むのに困ってない。 ライブの時は打ち上げで飲むからタクシーで行く。 運転は二人ともできる。 その時の雰囲気で運転手が決まる。 由梨が先に車のキーを取って、私にチャラチャラと見せながらにこっとした。 今日は運転する気らしい。 新曲を車の中で聴きながら練習するし、そっちの方がいい。 私は右手の親指をすっと立ててOKと伝えると、助手席に座った。 由梨の運転は静かだ。 表現としてはおかしいかもしれないけど、やっぱり、そう言った方がしっくりくる。 気が付けば動き出してるし、気が付けば停まっている。 景色を眺めているうちに気が付けば目的地に着く。 車に乗っていることに気を使わせないというのは、それだけ運転が上手いということだろう。 逆に私は、運転がうるさい…… スタートはダッシュするし、停まる時は急。 カーブを見ると「アクセルを踏む」し…… そう。 G(重力)を感じるのが大好きなのだ。 そういう運転の時、由梨はどうしてるかって? ぜんぜん平気。 たまにカーブでウィンドーに頭を打つけど、平気な顔して口だけで「痛ったぁ~」とか言ってる。 普通なら、ど突かれてもおかしくないんだろうけど。 あの余裕は本当にすごい…… 尊敬してます、はい。  
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