第4章 Y's

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新曲をカーステレオにかけて聴き続けていたが、気が付くと、いつものパーキングに着いていた。 時計を見ると3時45分だった。 貸しスタジオに入ると、既に幸代ちゃんと雪奈ちゃんが待っていた。 「ども」 二人の声がハモる。 「こんちわ」 「ども~」 私たちも手を挙げて挨拶する。 「今日は新曲演るよ」 「そうなんですか?」 幸代ちゃんが「おお!」という顔をする。 「任せてください」 雪奈ちゃんが親指を立てる。 「うん、任せた」 由梨が彼女たちに楽譜を渡す。 「いつものようにデモ流すけど、とりあえず見てて~」 「はあい」 やっぱり返事がハモる。 そんな返事を聞くのは意外と気持ちがいい。 時間の5分前になって、前のバンドがスタジオから出てきた。 「あ、Y'sさん!お久しぶりっす」 前にスリーマンライブの時に一緒に演ったことがある、クラウドという4人組のバンドだった。 「調子はどう?」 「最高っす。今日はみんなノりまくりで」 リーダーの直人君が言うと、みんながイエィ!と手を挙げる。 本当にノっているようだ。 「今度はいつ演るんすか?」 「来週の木曜よ」 「うおっ!どうしよっかな……行こうかな?チケットあります?」 「ごめん、立ち見ならOKだと思う」 元町ロフトはライブハウスとしては有名で、大きなハコだ。 それでも、テーブル席は100席しかキャパがない。 「そっかあ。さすがですね-!やっぱワンマン演るくらいだもんな」 彼らは頑張ってくださいと言って帰って行った。  
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