第4章 Y's

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彼らに手を振って見送った後、スタジオに入った。 ここのCスタジオにはドラムスとキーボードがセットされているので、持ち物は幸代ちゃんはスティックだけで、由梨にいたっては音源データのみという感じ。 由梨はさっそくDAP(デジタルオーディオプレーヤー)をスタジオ内のデッキに繋いで曲を流した。 Y'sのスタイルはいわゆるJポップ。 今度の新曲はアップテンポの曲だ。 山元姉妹はバンドスコアを見ながら集中して聴いている。 曲が終わった。 「じゃあ、今度は私がヴォーカルを入れるね」 私が言うと、二人ともうなずいた。 由梨がもう一度PLAYを押す。 流れ出した曲に私はマイクを通して声を乗せた。 ここに来るまでの道中もずっと車の中で聴いてきた。 元々自分で書いた詞だし、由梨のメロディの意味も手に取るようにわかる。 すっかり自分のモノにした気がしている。 歌い方をこの辺はこうしよう、ああしようとかも既に、車の中で由梨と検討済み。 2度目のデモが終わった。 「しまった……」 「つい聴き惚れてしまった」 幸代ちゃんと雪奈ちゃんが顔を見合わせて言った。 「そう?」 「それはうれしいわね」 「やっぱり結衣さんのヴォーカルと由梨さんの曲、最高」 幸代ちゃんの台詞に雪奈ちゃんがうなずいている。 「じゃあ、もう一回流す?」 「はい!お願いします」 「もう一回聴きたい!」 そう言う山元姉妹だった。 「ちゃんと自分の演奏を頭に入れて聴いてよね?」 私は苦笑した。 3度目のデモはちゃんと、自分たちの演奏のパートを確認したようだ。 「じゃあ、1回目の合わせ行くよ!」 「はーい!」  
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