第4章 Y's

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山元姉妹がハモり、由梨がうなずく。 幸代ちゃんがスティックを鳴らす。 出だしはいきなり息ぴったりだった。 さすがね。 途中、ちょっと雪奈ちゃんが難しいコード進行のところでひっかかったけど、何とか最後まで合わせられた。 「二人ともさすがだね……」 由梨がため息を漏らす。 「ちょっと間違えちゃった」 「あそこは一番難しいもの。ひっかかった程度なんてさすがよ」 私もため息を漏らしながら言った。 雪奈ちゃんがペロッと舌を出したけど、普通、1回目の演奏で最後まで行くこと自体がすごいと思う。 「そういう結衣さんは練習済みですか?」 「ううん。私も演奏1回目」 山元姉妹もため息を漏らした。 私たちは1回目の演奏では、ほぼデモどおりの演奏だったが、2回目はそれぞれ個性を加えた演奏になってきた。 もちろん、それを止めたりしない。 既に、4人の個性が乗ってこそ、Y'sの個性になっている。 曲を作った由梨もその個性の出し方は各人に任せている。 各パートの演奏が固まるまで繰り返し演奏した。 それでもみんなは10回ほどの演奏で手応えを感じたようで、終わった時の見合わせた表情がそれを物語っていた。 私も由梨を見た。 彼女もうなずく。 「じゃあ、これでもうY'sの曲ね」 「はい!」 「じゃあ、あと2時間だからライブの演奏順に1回流すわよ」 私の言葉を合図に、幸代ちゃんがスティックを鳴らした。  
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