第4章 Y's

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夜の11時を過ぎた頃、山元姉妹はタクシーで帰っていった。 由梨と二人で片付けた後、私は珈琲を淹れた。 カウンターに座ってぼーっとしていた由梨が、珈琲を受け取ると顔を軽く外へ振って合図した。 「OK」 私たちは珈琲を持って、もう一度テラスへ出た。 ドアから2つ目の、一番夜景の見やすいテーブルに座った。 「美味し♪」 由梨が一口飲んで言った。 私はにこっと笑顔で答える。 「今日も夜景がきれいだね~」 由梨が、両手にあごを乗せて言う。 今夜の夜景はドーム状に光を空に広げながら瞬いている。 「そうだね」 私は、椅子の背もたれに深く寄りかかり、腕を頭の後ろで組んで胸を突き出しながら、星を見た。 夜景の光に邪魔されて、そんなに多くはない。 ただ、こうしてると、自分が空中に浮かんでいるような錯覚を覚え、気持ちいいのだ。 「今日は会ったの?」 由梨が両手にあごを乗せたまま、ちょっと振り向き気味に私に視線を向けて言った。 「うん」 何も言わなくても、由梨にはバレてしまう。 「そっか。良かったね~」 由梨が夜景に視線を戻した。 「まあ、どうだろ?」 「なんで?」 由梨は夜景を見たまま言った。 「初めて来た日さ……」 由梨がちらっと見た。 「彼女となんかあったみたい」 「そっか。彼女がいたか~」 「うん」 私は珈琲を口にした。 「それにしては、笑顔で帰ってきたじゃない?」 「まあね」 由梨はふうんという感じで口元に笑みを浮かべた。 なんとなくわかったのだろう。 そう。 この出会いがなんとなくうれしかったのだ。 彼女がいる以上、彼氏にはならない、いや、しない相手だろう。 ただ、彼女がいようがいまいが、この出会いが気持ちよかった。 人との出会いは恋だけじゃない。 何もしなくても来週の木曜日には会える。 きっと今、私はいい顔していると思う。  
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