第5章 ライブの夜

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いつもと変わらない日常が過ぎて、ライブの日になった。 今日は6時半オープンの7時スタートだ。 4時からリハだった。 演奏的にはあまり必要ないが、ライティングとか各パートの音量合わせは必要だ。 スタッフの健輔君、祐太郎君、瞳ちゃんとはもう長い付き合いなので、それもあまり時間はかからない。 ただ、新曲のライティングはちょっと試行錯誤した。 それも決まったところで、開演までのんびりとお茶にすることにした。 「新曲、いいですねー」 「うん。オレもそう思う」 「あたし、踊りたくなっちゃいました」 健輔君達がちょっと興奮気味に言った。 ちょっとスタッフ以上の気持ちが入っている。 彼らもほとんどY'sのファンだ。 「ありがと」 「オレらいつもY'sのライブ聴けて幸せですよ」 「そうそう。こんなバイト辞められないよ」 「でも、健輔君はもう4年だよね?就職は?」 私は咽に良いハーブティを飲みながら言った。 「ええ、研究室に残ることにしました」 「へえ、何学部だっけ~?」 由梨は紅茶を飲みながら聞いた。 「理工学部。電子生命学ですよ」 「あ、そっか。教授は瀬谷さんだったね~」 「ええ。まだ准教授ですけど、その人の下での研究が面白くて」 「そっか~」 電子生命学…… そうだった。 以前、瀬谷さんに延々と説明を受けた記憶が… うう、ちょっと思い出したくないわ。 ただ、その先生の奥さんは知り合いなのよね。 「それで、ここは続けられるの?」 「はい。それもあって、かな?」 「良かった。私、健輔君けっこうお気に入りなの」 雪奈ちゃんが珈琲を飲みながら言った。 「あ……ありがとうございます」 ちょっと顔を赤らめている健輔君だった。 まだ恋愛には不慣れなのね。 「私もだよ」 幸代ちゃんが両手で持った日本茶を一口飲んだ後、下向きでちょっと挑戦的に言った。 う゛っ……幸代ちゃんと雪奈ちゃんの間にちょっと火花飛んでる…… 「えっと、皆さん飲み物のお代わりいりませんか?オレ入れてきます」 当の健輔君は逃げ出した。 祐太郎君と瞳ちゃんは付き合っているので、知らんぷりだ。 演奏に影響しなければいいけど…… 私と由梨は顔を見合わせて苦笑した。  
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