第5章 ライブの夜

3/7
前へ
/2979ページ
次へ
6時半になりオープンした。 お客の入りは、壁際まで立ち見で埋まっている。 ありがたいことです。 由梨がちょっと舞台袖から覗いた。 「一番前に昇君がいるよ~」 「ほとんど親衛隊だね……」 私は苦笑する。 「彼はいないみたい~」 「こらこら、誰を捜してるのよ」 「あら、待ってたんでしょ?」 由梨が半分振り返って言った。 「まあね」 私はあきらめて認める。 「きっと来るんじゃない?」 「そうね。そんなことより演奏に集中してよね?」 「大丈夫。結衣と違って私は気にしていないから~」 そう言いながら、由梨はまた客席を覗きながらお尻を振っている。 「そうか?え?そうか?」 私は由梨を引き寄せ、その口を両手で引っ張った。 「この口が言ってるのか?」 「うう……すびばせん~」 由梨が笑いながら謝る。 「ほんと、人の恋で遊ばないでよね」 私は手を離した。 「お互い様よ~。私の時は結衣が同じ事するでしょうに……」 「その日の気分よ」 「するって」 「じゃあ、しよっと」 「だめ~」 そんな風にじゃれ合っていると、ふと視線を感じた。 二人でゆっくり振り返ると、山元姉妹と健輔君達が苦笑していた。  
/2979ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3589人が本棚に入れています
本棚に追加