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6時半になりオープンした。
お客の入りは、壁際まで立ち見で埋まっている。
ありがたいことです。
由梨がちょっと舞台袖から覗いた。
「一番前に昇君がいるよ~」
「ほとんど親衛隊だね……」
私は苦笑する。
「彼はいないみたい~」
「こらこら、誰を捜してるのよ」
「あら、待ってたんでしょ?」
由梨が半分振り返って言った。
「まあね」
私はあきらめて認める。
「きっと来るんじゃない?」
「そうね。そんなことより演奏に集中してよね?」
「大丈夫。結衣と違って私は気にしていないから~」
そう言いながら、由梨はまた客席を覗きながらお尻を振っている。
「そうか?え?そうか?」
私は由梨を引き寄せ、その口を両手で引っ張った。
「この口が言ってるのか?」
「うう……すびばせん~」
由梨が笑いながら謝る。
「ほんと、人の恋で遊ばないでよね」
私は手を離した。
「お互い様よ~。私の時は結衣が同じ事するでしょうに……」
「その日の気分よ」
「するって」
「じゃあ、しよっと」
「だめ~」
そんな風にじゃれ合っていると、ふと視線を感じた。
二人でゆっくり振り返ると、山元姉妹と健輔君達が苦笑していた。
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