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「お疲れ!」
みんなで手を打ち合う。
ステージの方からはアンコールの拍手がずっと聞こえている。
衣装を着替えて、水を飲んだりして、短い休憩。
「さて、行くよ」
私達はもう一度ステージに戻った。
アンコールは3曲。
そして、鳴り止まないアンコールに、もう一度アンコールで1曲。
合計26曲を演り切った。
演奏後は、テーブル席でしばしカフェバー状態となる。
ファンも残って語らいもOKだ。
CD等の物販は健輔君達がやってくれる。
もちろん、希望者にはサインもするけどね。
楽屋から出て、テーブル席に向かった。
さっきまで彼のいた席を見た。
思わず笑顔になる。
彼は残ってくれていた。
「結衣さん!」
光平君はすっと立って、軽く右手を挙げた。
「今日は来てくれてありがとう」
私は彼のところに行って右手を出した。
「いえ、こんな素晴らしい音楽に出会えて感激ですよ」
彼は照れずに私の手をすっと握った。
私はそんなスマートさに、また笑顔になる。
「ありがとう。この後はここで飲むけど?」
「あ、そうなんだ。残念だけど帰らなきゃいけないんです」
彼は少し遠い眼をして答えた。
「そっか。じゃあ、また来てね。ほとんど月イチでやってるから」
「はい。もうすっかりファンですよ。CD買って帰ります」
「ありがとう」
そして、彼はちらっと私の腕を見た。
「今日もしてくれてるんですね」
「もちろんよ。お気に入りだからね」
私は左腕を挙げて軽く振りながら答えた。
彼が微笑んだ。
(いい顔だ)
彼は瞳ちゃんからCDを買ってから私の方を振り向いて、軽く手を挙げて帰って行った。
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