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「――ル。………ルル、大丈夫 ?」
何度も声をかけられて、ルルはやっと我に返った。
「……サフィ。」
「よかった。何度声をかけても返事がないんだもの。」
「………。」
ルルはなにも答えなかった。しばらくの間があって、サフィニアが口を開いた。
「―――ごめんね。」
彼女が突然あやまってきた事に驚いて、ルルはサフィニアを見つめた。
「どうして……サフィがあやまるんだ?」
「だって私。あなたがそんなに傷ついてるなんて、知らなかったから。」
サフィニアはそう言って、ルルのとなりに座った。
「私たち人間が獣人族を差別しているのはホントよ。でも、それは昔の話……。今は地上に残っていた獣人族さんたちと仲良く――。」
「ウソだ……。」
ルルは震えた声で、彼女の言葉をさえぎった。
「それは昔の話……だって?そんなのウソだっ。今だって差別はあるじゃないか!!子供には石を投げられるし、さっきだって……。」
サフィニアはルルをそっと、背中から抱きしめた。
「地上からは差別はほとんどなくなったけど……。この街にだけ獣人族への差別がまだ残ってるの。私がもっと早くに言っておけばよかったの。……ごめんね。」
ルルは自分の胸の前にある彼女の手を握って、そっと月を見上げた…。
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