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しばらくの間があって、ルルはポツリと言ってきた。
「―――ルルナリアス=ライト=フェンネ。」
「え……?」
「オレの……本当の名前。サフィにはまだ、教えてなかっただろ?」
「それはそうだけど……。『ライト=フェンネ』って、まさか。」
ルルはコクリと頷いた。
「黙っててごめん。地上で月の国の王家の名前を出したら、マズイと思ったから……。」
ルルは現王アークスの息子で、第一王子にあたる。そんな彼の王家の名は、悪い意味で……ではあるが、地上にしっかり伝わっていた。
「教えてくれてありがと。私、嬉しい。」
サフィニアがそう笑顔で答えて、また彼のとなりに座った。
ルルには、そんな大げさに喜ぶ理由がわからなかった。
「だって……。この地上であなたの本当の名前知っているのは、私だけだから。」
ルルは嬉しくなって、口もとで小さく笑った。
「そういえば、さっきの人は?」
「心配ないわ。ホラ……。」
サフィニアはそう言って、店の扉を示した。中から二人の男が出てきた。中から出てきた人間の男は、先程やってきた獣人族の男に肩をかして歩いてきた。獣人族の男はこちらに気がつくと、軽く頭をさげた。
「全部オレの不注意が招いた事なんだ。本当に悪かったな嬢ちゃん。ボウズも驚かせて悪かったな。」
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