5章~月からの使者~

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「………マオ。」 そう呼ばれた白猫は、カウンターに軽々と登り、ルルの目の前に立った。 「さぁ王子。私とともに国へ帰りましょう。」 その言葉に驚いて、サフィニアが二人の間にわって入った。 「あのっ。国へ帰りましょうって、ルルが国に帰れる方法があるんですか!?」 「……私は王子を連れて帰る為にここに来たのですから、方法があるのは当然のこと。」 白猫はサフィニアをチラリと見て、シッポをパタパタと振りながら、冷たい口調でそう言った。 「………オレは。父の命令に従って帰る気はないよ、マオ。」 「それはまた……なぜですか?ルル様。」 ポツリと言ってきたルルの声に白猫は振りかえり、彼の発言に驚きもせず、その先を促した。 「地上の人間たちは、今もこの地に残ってる獣人族と共存の道を歩みはじめてる。言い伝えとは違うことを 、オレは知った。」 ルルは片手のこぶしを強く握りしめた。 「だから―――。」 「アークス陛下を説得する。違いますか?」 ルルの言葉をさえぎり、白猫がそう言った。 「マオ……おまえ。」 「実は私、少し前から地上には月の道を使って行き来していたのです。ルル様と同じ目的でね。」 白猫はニコリと笑って、手を差し伸べた。 「行きましょう、ルル様。世界を再び、共存の道をゆく世界にする為に。」 ルルは白猫の小さな手をとった。
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