1.俺に何か恨みでも

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 背中ごしにでも分かる担任の女教師の声。 きっとこの担任は今、腰に両手を添えて何の変てつもない安っぽい眼鏡をかけて、俺の背中を見ているのだろう。 少し高慢な雰囲気を漂わせるその格好を、俺がこの顔で振り向いたらどのくらい壊せるのだろうか。  考えただけでニヤつく顔を必死で抑えこんでいたら、「すみません」と何故か目の前の三上が謝った。 「俺が手をすべらせて坂本の顔に黒板消しを当ててしまったんです。少しチョークの粉が付いているので、顔を洗いに行かせて下さい」  思わず一歩後ずさるほどの満面の笑み。  黒板消しを顔に当てたことがそんなに嬉しい話なのか。 その上絵本の熊のようになっている俺の口元を見て『少しチョークの粉が付いている』だって? 少しの意味分かってないだろ、お前。  やはりわざとやったに違いない。  
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