1.俺に何か恨みでも

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   この人物もそう思ったのだろう。  厚手のコートがかかったパイプ椅子に座り直すと、もう一度唸り始めた。  ――ピリリリリ……  ふとそんな止まった空気を破るように、部屋いっぱいに高い機械音がひびく。 自分のズボンのポケットから聞こえてくるソレに、「マナーモードにするの忘れてた」と、驚いて早まった心拍を抑え、どこか安堵した息を吐きながらその高音を止める。 すると待ってました、とばかりにこの部屋の空気に似つかわしくない明るい声が騒いだ。 『せんぱーい! 今何してるんですかー? 部活来て下さいよー!』  何故かとても嬉しそうに話す後輩。安易に相手の表情が読みとれた。  窓の外を見やると、曇ったガラスの向こうにチラチラと白い粒が舞っているのが分かる。
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