1.俺に何か恨みでも

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  ――*――  真っ白い頭の中にお気に入りの曲のサビ部分が流れる。 しばらく聞いてからそのメロディーが目覚ましのアラーム音になっていることを認識し、あわてて音源に手をのばす。  たぐり寄せてスライド式の携帯電話の画面を見れば、三度目のアラーム設定時間がでかでかと表示されていた。 相変わらず十分ごとにアラームを何個も設定しなければ俺は起きられないらしい。 「今日は三回か……」  午前八時ちょうど。 本来ならば七時四十分起床のところなので、二十分の寝坊だ。  少しかけ足気味に寝巻きのジャージから学校指定の制服に着替え、クリアケースに今日の分の教科書を詰め込む。 「ジューン、もうそろそろ起きなさーい」  四度目のアラームと同時刻にかかる母親の声。 俺が二回目のアラームで階下に行かないと必ず言ってくれる。
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