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「お袋! 悪い! 俺の部屋のカーテン開けといて!」
決して珍しくはない。
自分の部屋のカーテンを閉め忘れることはないが、開け忘れることはちょくちょくある。
平凡な俺の日常。平凡な俺の生活。
携帯電話の画面を明るくすれば、時刻は八時二十三分を示していた。
走らなきゃダメか……。
小さくため息を吐くと、雪に日の光が反射する銀色の道を、俺は仕方なくかけ出した。
徒歩十分の距離。
走っていけば何てことはない。
ものの五分で自分の教室の前に着いた俺は、少しの余裕をもって引き戸を開けた。
――途端に顔面いっぱいにきた柔らかい衝撃。
それと同時に粉のようなものが舞って深くせき込んだ。
せきがおさまり、そのぶつかったものが当たった部位を触れば白く色づく手。
目線を下ろせば転がる青色の長方形。
「……何で黒板消し……?」
教室の引き戸を開けてすぐにこの状況。
いくら普段ムダにバカやってる俺だって、戸を開けた瞬間に黒板消しとご対面などという漫画のような出来事には十七年間遭ったことがない。
しかも顔。
登校して早々何だコレ?
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